ブリトニーとゴルゴ13が家に来ちゃった!? どうやってもてなすの?? 最良のオモテナシ1選。
こんにちは。
いしまんです。
暑い日が続きます。
そろそろ、アレにおびえる季節ですね。
特に地べた住まい(戸建てや借家)には切っても切れないアレ。
我が家での呼び名は2種類ある。
奥さんは『G』と呼び、私は『ブリちゃん』と呼ぶ。
そう。
タイトルで釣るつもりはないのだが、あいつのことだ。
暗闇にまぎれる漆黒のボディをもち、6足歩行を生かした駆動力と俊敏性。
しなやかに伸びる好感度センサーは、小刻みに「右へ左へ」とウィービングすることで実現される。
そのセンサーは、周囲の危険を察知する安全性能を見せつけるには、余りあるほどの長さ。
人はそれを忌み嫌い、目にすること、口に出すことすら はばかられる。
いつしかヤツには隠語があてらるようになった。
ネット界隈を見回すと『G』と呼ぶ方が多いようだ。
確かにあのフォルムや、静かに忍び寄るさま、スナイパーとしては申し分ないのかもしれない。
しかも、ヤツの背後に回り込むことは至難の業だしな。
でも、マジョリティ嫌いの私はあえてそこは「ブリちゃん」だ。
ひねりも芸もない隠語だが、「ちゃん」をつけることで後ろめたさを幾分か和らげているつもりだ。
ある人は言うだろう。
地球上のすべてのモノに意味があり、価値があり、愛すべきものだと。
否。
そんな綺麗ごとはヤツには通用しない。
確かにヤツが人間に対して危害を加えることはない。
では、なぜ人はヤツを恐れるのだろうか??
奥さんの「ブリちゃん」に対する防犯対策はかなりのモノで、情報収集もハイレベルなのだが、そのレポートの中にこんな一文を目にした。
【ヤツは地球外生命体である】
もちろんエビデンスなんてものは皆無なのだが、人が無条件に恐れを抱く対象として、圧倒的な承認力をもっている。
ヤツらは元々地球上で生まれたわけではなく、地球侵略のために現れたインベーダーであると仮定してみると、なおさらだ
きっと太古の人類は、ヤツらが侵略者であることを知っていた。
しかし、現代ではその事実は抹消されてしまい、根拠に乏しい「恐怖」だけが残ってしまった。
では現実世界で起きている事象をレポートします。
その日の帰宅時間は23時。
ちょいとデスクワークが溜まっていたので、いつもよりも遅めの帰宅。
当然この時間には、奥さんと息子二人は就寝中なのだが、その日は少々異なる。
バイクを停めて、家のほうへ目を向けると白い明かりがついている。
基本的に夜間、彼女が蛍光灯をつけることはない。
光色がウンタラカンタラで、睡眠の質をナントカカントカらしいが、わたしはいつも既聴スルーしている。
そんな奥さんが蛍光灯を点けたまま、眠っているとは思い難い。
扉を開けて部屋へ入ると、寝室のふすまが開いており布団の上で3人が車座になっていた。
(ははぁ~。1歳児が泣いて奥さんが起きているうちに、7歳児も目が覚めちゃって、悪乗りで遊び始めた23時ってとこですなぁ。よっしゃー!おれも遊んじゃおっと!)
と、いった妄想を働かせながら寝室へと近寄ると、神妙な面持ちで奥さんがこちらを見てくる。
奥:「でた」
俺:「まじか……」
たった五文字で十分だった。
いやヤツに敬意を払うならば、たったG文字だな。
意外なことに、奥さんの状況は比較的安定していた。
彼女が「ブリちゃん」又はそれに類する虫に遭遇すると、往々にして発作が起きる。
主な症状は、
「過呼吸」
「動悸」
「どんぶり」
そう!
「どんぶり」なのです。
想像してみてください。
暗い部屋でひとり♪
テレビはつけたまま♪
僕は眠りの中♪
何の夢を見てる~♪
イエモンのJAMが脳内リフレインしてる、次の瞬間。
テレビと壁の隙間から、黒い影が現れた時
A:たたかう
B:ぼうぎょ
C:にげる
選択が難しいですよね~。
最終的には一択問題なのに、刹那の選択肢は無限なのですよ。
まずは逃げるを選択してみましょう。
ヤツの存在を忘れて、床に就いてヤツの存在を忘れてみます。
でも……
もしもヤツがあなたの枕元にやってきたらどうしますか?
あなたが寝ている間にキッチンへと侵攻して、コップの縁をお散歩していたらどうしますか?
そうなんです!!
「いてもたってもいられん」のです。
つまり「にげる」は無いのです。
次は防御を選択してみましょう。
人類の、わかりやすい防御は「境界」です。
隣家との壁、国と国との国境。
でもね。
ヤツに「境界」など通用しないことを頭では理解していますよね。
つまり。
「たたかう」しか法がないのです。
たとえ結果が「あきらめる」になったとしても「たたかう」のです。
ココで重要になってくるのは『武器』。
私レベルの猛者になれば、素手でもヤツと渡り合えるのですが、世の女性のことを鑑みると「武器」は重要です。
しかし、ヤツは我々の「虚」をついて現れます。
遭遇した状況によっては、最適な武器が手元にあるとは限らない。
どんな苛烈な状況に置かれても、人は何かの『道具』を手にすることで、状況を打開してきた生き物である。
あなたは、何を手に持ちますか?
これは心理学的にも通じるものがある。
困ったときに手にするモノ。
それは「あなた」が深層心理の世界で、心の拠りどころとしているモノである可能性が極めて高い。
彼女の場合は、それが「どんぶり」なのだ!!
三人が待ち構える寝室へ入ると、みそ汁椀が一つ、どんぶりが一つ、布団の上に転がっていた。
なぜだろう?
なぜ彼女の武器は「どんぶり」なのだろうか?
理由を聞いても意味が分からない。
今回もヤツを見つけるなり、長男をたたき起こして
奥:「どんぶり!どんぶり持ってきて!」
奥:「わたしは見張ってるから!!」
うぅ~ぬ……。
意味不明。
でも彼女にとっては「どんぶり」が拠りどころなのだから、他人がどうこう言う問題ではないのかもしれない。
もちろん彼女が「どんぶり」を有効活用することは一切無いわけだがな……。
一方のヤツは、タンスの裏に隠れたっきり出てきていない様子。
出現からすでに10分以上は経過している。
膠着状態を打破するために、彼女が切り出した。
奥:「やろっか?」
俺:「ん??」
私は何を言われたか、判っていた。
でも仕事で疲れた体を奮い起こすには、少々時間が遅い。
とりあえず、言葉の意味を分かっていない体を装ってみた。
奥:「前にもやったよね」
俺:「まぁねぇ……」
彼女は以前にあった我が家の事件。
深夜の大捜査線~「THEブリちゃん」~ベットルームを封鎖せよ
のことを引き合いに出している様子だった。
しかし、その時の結果は「あきらめ」だった記憶がある。
つまり彼女は俺に、こう言いたいのである。
「寝室のタンスをどけて、退治しよう」と。
我が家の小さな寝室は、壁際に家具が並んでいる。
中ぐらいのタンス、大きなクローゼット、大きな木製のままごとキッチン、本棚。
ヘビー級のオンパレードなのだ。
それを、深夜0時前の仕事を終えた私に「どけて退治しろ!!」と、おっしゃるわけだ。
(いやぁ~。正直つらいなぁ……。)
俺:「とりあえず、お風呂入らせて」
彼女の要望を適度にいなして風呂に入る。
(なんとか発作が収まらないかなぁ……)
早々に風呂を上がって、すぐさま状況を確認する。
「ブリちゃん」は未だ姿を現さない。
彼女はまだ臨戦態勢を解いていない様子だ。
長男はすでに再眠体制に入っており、覚醒しているのは彼女と赤ちゃんのみ。
俺:「少し、起きてよっか?」(晩酌したいし……)
俺:「どのみち電気つけてたら、あいつは出てこないよ」
灯りを豆電球に変え、部屋の光量を下げてポツポツと会話し始める。
会話の内容は当然、「ブリちゃん」について。
俺:「昔はよく過呼吸になって、パニック障害になってたよね」
奥:「このうちに来てからは、G以外の虫に遭って少し免疫ができたかもね。足高さんとか」
「足高さん」とは、「ブリちゃん」の天敵として有名な「アシダカグモ」のことだ。
我が家で共存が許された唯一の虫。
しかし、
そのサイズがね……。
「足高おじさん」クラスになると、おおよそ大人の手のひらサイズはある。
それが夜影に壁を這っている姿たるや、異世界から召喚されし「魔」である。
我が家は、真っ白な漆喰の壁。
そこに手のひら大の、黒き影が滑るようにして移動していく。
「ブリちゃん」の天敵なのは十分理解していても、少々許しがたい恐怖を与えてくる。
なかなかに、おぞましい光景なのだ。
奥:「去年は一度も出なかったのに、今年は何か違うのかなぁ~」
俺:「赤ちゃんもいるし(食べ物散らかす)、今年は少し湿度が高くて暑いからね~」
晩酌も終盤に差し掛かり、もう一杯とキッチンへと立ち上がったその刹那。
俺:「いたっ!!」
ブリチャン ガ アラワレタ!!
(脳内にはドラクエのバトルミュージックがリフレイン中)
ココから先は音楽を流しながらどうぞ。
てゅるるるるるるるるるるるぅるるぅ↑♪
ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪ズンチャ♪
て~~れーれー♪ れーれー♪
テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪
て~~れーれー♪ れーれー♪
テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪テペポパッペポ♪
てけてけてっ!てけてけてっ!ふにゃふにゃ♪
てけてけてっ!てけてけてっ!ふにゃふにゃ♪
てーれてってってて~♪てけてって♪
てーれてってってて~♪てけてって♪
ブリが出た!ブリが出た!ブリが出た!
ウソだ!ウソだ!ウソだ!ウソだ!まじ……。
ブリが出た!ブリが出た!ブリが出た!
まじか!まじま!まじか!まじか!まじ……。
ぴゅるるるるるぴゅるるるるるる~~~~~~♪
当然、「俺」の選択は
▲「たたかう」
「ぼうぎょ」
「にげる」
しかし、武器が無い。
素手でもイケるが、痛恨のミスを犯さないためには、素手よりも場面のデカい武器が必要なのだ。
よく見る武器に「雑誌を丸めた棒」なんてのがあるが、あれは大きな間違いである。
丸められた棒は、打面が極端に小さくなり空振りの可能性が高くなる。
イメージしやすいのは車のタイヤ。
あんなに大きな円形なのに、地面との接地面は『ハガキ一枚分』なのだから、円と面の物理的性質を見極める必要がある。
つまり面に対しては、『面』で立ち向かうのが最良となる。
ヤツは寝室から場所を替え、すでに居間の壁に現れている。
驚くべき機動力だ。
しかもヤツはまだ、奥の手を隠し持った状態。
居間にある息子の本棚の影から現れ、高感度センサーを左右に振りながら様子をうかがっている。
センサーが危険を察知し次第、すぐ本棚の陰に隠れことが可能なポジショニングをキープしている。
そう。
ヤツはまだ「かくれる」と「飛ぶ」と言う、逃走経路を持っているのだ、
ヤツとの戦いで、忘れてはいけないことがある。
【決してヤツから目を離してはいけない】
特に薄暗い環境においては、ヤツに合わせた焦点を一度離すと、再度認識するまでに時間がかかってしまう。
そのわずかな時間が命取りとなるのだ。
私は決して目を離さない。
一人で武器を探索しながらも、奴から目を離さない。
そんな作業は至難の業だが、今回は彼女がいるので一安心。
俺は腰を少し沈めて、目線をヤツの高さに合わせた。
左手は「だら~ん」と前に出したノーガード戦法。
しかし、右手は違う。
その容姿は『トレンチを持つウェイター』。
もちろんシャドーゆえに、トレンチなどは持っていない。
シャドーしている俺の右手に、彼女が武器を置く手はずとなっているのだ。
居間にある最適の武器は、雑誌であることは揺るがない。
そして、前述したように雑誌を「丸める」なんてことはしない。
雑誌も様々あるが、Nissenやタウンページは愚の骨頂。
破壊力こそあれ、ヤツの機動力に対しては重すぎて不向きだ。
かと言って大学ノートの様なライトボディでは、手への馴染みが軽くこれまた不向き。
理想的な雑誌は
PJ
名称:ピーチジョン
通称:婦人用下着雑誌
属性:一流モデルかつ二流タレント
攻撃力:ローラ・アンナ級
そっと俺の右手に置かれた、PJ。
適度な重さと、表紙の可愛さは「Nice One!!」。
表紙のモデルも、まさかこれから「ブリちゃん」とたたかう羽目になるとは思いもしなかっただろう。
俺は右手にPJを持ちつつ、ヤツとの距離を縮める。
じわじわと。
距離にして1m。
少し異変を感じて、歩みを止めた。
ヤツのセンサーの振り幅が大きくなったのだ。
まずい。
気取られたか……。
即座に「俺」は、気配を殺す。
ドラゴンボールで言うところの「気」を消す。
ハンター×ハンターで言うところの「絶」。
少々気負い過ぎて、殺気がみなぎっていたようだ。
しかし気配を殺し、心穏やかにして「ブリちゃん」を凝視するだに、まぁ、気持ちの悪い事この上ない。
サイズにして100円ライター程度。
触角はボディと同等の長さ。
そして、丸いと思っていた頭部が『∩』ではなく、『凸』の形になっていることに気が付く。
個体差なのかもしれないが、気持ち悪さが加速した。
1分ほどの睨み合いの末、ヤツがゆっくりと前進を始めた。
ヤツと本棚の隙間との距離は約20cm。
頃合だった。
「うぉらっ!!」
一気に1mの距離を詰めて、「ブリちゃん」目がけて『PJ』をブチ込んだ!!
「どぅぉ~~ん!!」
小さな借家が、大きく揺れた。
てれれれってれっれーーー♪
イシマン ハ ブリチャン ヲ タオシタ
……
『PJ』 ハ ノロワレテ シマッタ
イシマン ハ シックイ ノ
カベ 二 ベホイミ ヲ トナエタ
カベ ハ ウエット ティッシ ニ ヨッテ
イチメイ ヲ トリトメタ
結論:
ブリトニーとゴルゴ13が家に来ちゃった!? どうやってもてなすの?? 最良のオモテナシ1選。
- ブリトニーはアンナで制す
- ゴルゴ13はローラで制す
以上!!
いつか誰かの「たたかい」の参考になれば……。
汚してしまった『PJ』も、もとい。
ローラやアンナも報われるはずだ……。
おしまい